うるさい素人

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英語発音雑記(8) /j/(yearとearの違い)

この雑記では、英語発音に関する私自身の回想や考えなどを「独り言」感覚で綴ります。発音方法を解説することは意図していませんのでご了承ください。

なお、今回は、5,000字超あります。

 

この音の認知度や扱われ方について

発音記号 /j/ は、yes、yard、year などの最初の音。発音記号では /j/ と書くが、ジェイではない。記号の割り当ての関係で「y」の字が使えず、こうなっているだけで、「Yの音」と捉えれば良い。

 

この音、音声学では「半母音」に分類されているが、発音を習う上では普通に「子音」と捉えれば良いと思う。時間的な変化を考慮すると子音の性質があるし、音自体、強く発音すると摩擦音が伴って子音の性質が出てくるからだ。

 

この音が入った頻出単語に you  /jú:/ がある。音声学では、この /ju:/ のカタマリで母音(二重母音)だと捉える考え方があるが、僕は、普通に子音 /j/ + 母音 /u:/ と捉えている。

 

このブログ記事を書くにあたって音声学の書籍で確認をしていたところ、僕が実践している発音方法とは異なる解説になっていて驚いた(これまで普通に読んでいた時は気づかなかったのだが)。最初は「変な解説だな」と思ったが、よく考えると筋が通る解説だったので困惑してしまった。

 

学問的には筋が通っても、実際にどうやって発音するのか。実践できなければ意味がない。音声学では、具体的な発音方法に関する解説が非常に乏しい。発音に関する他の書籍(所有しているもの)でも確認してみたが、音の出し方に関する説明はないに等しかった。

 

YouTubeで解説している人の動画を見てみたところ、「僕と同じことをやっている人」が複数いて安心した。中には「それは捉えどころが違うだろう」と言いたくなる解説をしている人もいた。「これでは見ている人は混乱するだろうな」と感じた。

 

この音の出し方について、「これが正解」と言えるような標準的な解説はほとんどないようだった。一部の「音から入るタイプの人」や「練習が好きなタイプの人」が、経験上の持論を説いているだけ、という印象だった。

 

この混沌とした状態は、「舌を引くR」や「ダークL」と共通しているように思う。舌の後ろの方を使って発音することが、教育の場では受け入れられていないからでは?というのが僕の勝手な想像だ。


この音に対する僕の体験

子供の頃から発音を習っていた僕だが、どういう訳か、この音を習ったり練習したりした記憶がほとんどない。

 

/j/ という発音記号は知っていたし、「yieldという単語は発音しにくい」という認識はあったので、この音の存在はわかっていたはず。なのに記憶が薄かったということは、「you は “ユー” で通じるから難しくない」ぐらいの認識だったのかも知れない。

 

月日が経ち、50代のやり直し英語で、この音ならではの特徴を初めて知った。「year と ear の違い」の話題があって、「えっ?」と思った。

 

音を出すこと自体は、ネイティブの解説動画を見て、真似ているうちにできるようになった。綺麗な音を出すことについては今でも練習対象にしているものの(どの音でもそうだが)、この音については、特に「難しい音」という認識はない。

 

「year と ear を聞き分けられるか?」というクイズがあったりするが、ハッキリ発音されれば、「この違いがわからないはずがない」ぐらいに思う。ただし、ネイティブが、意地悪なぐらい速く発音すると「え?」と思うことは普通にある。

 

この音が気になり出してから、当時やっていた音読(文法書の例文音読)を行う際、この音が入るところにはすべて印をつけて、意識して発音するようにしていた。

 

この音に関し、year と ear ばかりに関心が高まっている傾向があるようだが、you  /jú:/ は頻出単語だし、million  /míljən/、opinion  /əpínjən/、onion  /ʌ́njən/ など、意外なところでも結構出てくる。

 

当時は、「どの単語にこの音が入っているか」自信がなかったので、たびたび辞書で発音記号を調べては、例文のところに自分なりの記号を書き込んでいた。

 

you みたいに、カタカナ発音で「ユー」と発音しても十分通じるものについても、摩擦音が混じるぐらいの強めの音(後述)で発音練習するようにした。

 

そのような音読練習をしているうち、この音が聞こえるようになってきた。「今まで、これが聞こえていなかったんだ」と思った。

 

ネイティブ(アメリカ人)が速いスピードで話していても、この音がしっかり出ていることがあることがわかった。特に、year を発音する時、極端なぐらいハッキリと発音されることがあるように思う(意味的にも強調される場合だったりするが)。

 

その後、今ではこの音を「発音し損ねる」ことはなくなったが、音の「加減」については、もっと洗練させたいと思っている。


音の出し方の種類と僕の発音方法

僕はこの音を以下③のように出している。

 

①舌の前の方が高い

(後述)

 

②舌の中央あたりが高い

舌先よりやや後ろの上面を、日本語の「イ」よりも少し高くして、「上の奥歯(左右)」と「舌の両側」が触れるようにする。すると「口の天井」と「舌の上面」との隙間が狭くなるので、「ヒー」みたいな音が混じる。さらに狭めると「ギー」みたいな雑音が混じる。
「ギー」という「濁った音」までやるとやりすぎだとは思うが、「ヒー」よりはだいぶ狭めた感じの「空気の摩擦音」が、Yの音を感じさせる音だと思っている。

 

厳密には、このような「ギー」みたいな摩擦音は、音声学でいう「硬口蓋摩擦音」というものだと思う。/ʝ/ という記号を使う。通常、英語では見ることがない記号。日本語の「ヒ」の子音部分 /ç/ を有声音にした音。


③舌の奥の方が高い

僕は、口の天井と舌との隙間が狭まる位置を、上記②よりさらに舌の奥の方(喉方向だが、喉まではいかない)にしている。やりすぎると「グッ」と鳴りそうなぐらいのところ。


加減が難しいが、やや「ギー」や「グッ」という濁った音が出そうになるぐらいで、you とか yes とか yeah と言ってみると、カタカナの「ユー」「イエス」「ヤァ」よりも緊張感のある音となる。このギュッとしまった感じの音が、強く発音したYの音の特徴だと思う。

 

厳密には、この濁った音は「軟口蓋摩擦音」に近いと思う。/ɣ/ という記号で、これも英語では使わない記号。

 

僕は、上述の③の音が /j/ の音だと思っていて、この記事ではそれを書こうと思っていた。ところが、この記事を書を書く前に調べたところ、口の天井と舌が狭まる前後の位置については、解説によって幅があることがわかった。

 

音声学だと、「イ」の音と同じように舌の前の方が天井に近づくことになっている(この項の冒頭の①にあたる)。カタカナの「イ」や、英語の /i:/、/ı/ では、舌が上の方に持ち上がるが、それをさらに上に持ち上げたところが、/j/ の開始点ということになっている。

 

一方、僕は、③のように、舌の後ろの方を狭くしている。YouTubeで、そのような説明をしている人が何人かいたが、みな、僕と同じぐらいの位置だと思う。ただ、この方法だと、舌の後ろの方を動かすことに慣れていないと難しいかも知れない。

 

①②③について、実験して確認してみた。


舌が持ち上がる位置(口の天井との隙間が狭まる位置)を、①から③まで、移動してみたところ、どの位置でも、それらしい音が出るようだ。

 

しかし、①のように前の方で発音しようとすると、唇が少しすぼまる。「you」を発音しようとした時、後半の /ú:/ で口がすぼまるのは普通のことだが、最初の /j/ の音を出そうとした段階で、すでに口がすぼまろうとするのなら、①で発音しているのではないかと思う。音声学的には正しいと思うのだが、このような発音方法では、year などの /ji/ は発音しにくいと思う。「ユュイ」みたいになってしまうのではないだろうか。舌が上がる位置を少し後ろにずらさないと発音しにくいんじゃないかなと思う。


この音は本来、相対的なもの

この音や /w/ の音は相対的なもので、絶対的な舌や唇の位置といえるものがない。後ろに続く母音により、位置は変わる、というのが音声学での説明だ。

 

音声学的には、/w/ と /j/ は、後ろに続く母音へと変化するところが肝となる。

 

/w/ では、後に続く母音よりも「より唇がすぼまったところ」からスタートする。/j/ では、後に続く母音よりも「より舌が高いところ」からスタートする。それらの位置から母音へつながる「変化の具合」こそがこの音、だということだ。

 

ここで、カタカナの音でも良いので、ちょっと確認。

たとえば「腰が低いおじさん」が、照れた感じで「イ」と言っていることを想像する。

この「」の母音部分を全部「」にするとどうなるか。

「イ」となる。

このうち、太字の部分(元々「」だったところ)が、「より舌が持ち上がって緊張感がある強い音」になる。

つまり、同じ「イ」のような音でも、2種類の位置があり、それを行ったり来たりすることになる。

このような「変化自体」が /j/ の音なのだ、ということができる。

 

よって、/j/ の音だけを聞き取ろうと思っても、/i/ と区別はつかない訳である。

 

実際には、前述の②③のように、やや「ギ」がかった濁った音(摩擦音)を出している人も少なくないと思う。この濁った音(厳密には /ʝ/、/ɣ/ の音、あるいはそれに近い音)は、空気の流れが妨害されているので、音自体が子音だと言える。

 

僕は、この濁った音を /j/ の音だと思って練習してきた(厳密には正しくないのだが)。それで、だいたい感覚はつかめているし、通じないことはないはず。ただ、濁らずクリアな /j/ を発音されると聞き取れない時がある。摩擦音だけを頼りにしていては聞き取れないことがあるのだ。「変化自体を感覚的に捉えられるようにならなきゃ」とは思っているが、あまり焦っていないのが正直なところだ。


year と ear の違い

よく話題になる year と ear だが、頭に /j/ の音が付くかどうかの違い(ここでいう /j/ は、摩擦音を伴ったものを含むものとする)と言って良いと思う。

 

すると、year の /j/ の音をしっかり出すことが重要になってくる訳だが、実は ear の方にも問題がある。日本人が、ear をカタカナ的に「イヤー」と発音すると、/j/ のニュアンスが入る。よって、もし、カタカナ発音の「イヤー」の意識が強いようであれば、year と ear の両方を直さないといけない。

 

ear の最初の音は /í/ なので、big などと同じ。「イ」に少し「エ」が混じった音(ear の場合、big よりも、やや「イ」寄りに発音されることが多い印象があるが)。原則として「ヤ」のニュアンスは入らない。ところがちょっとややこしいことがあって、「/i/ の後に母音が続く」ことから、間にYのような音が入る現象があるのだ。それが起こると、たしかに「イヤー」に近いニュアンスになる。しかし、「year と ear の違い」を練習する上では、意識してYが入らないようにした方が良いように思う。

 

year は、基本的には ear の前に /j/ が付いた音。音の長さ・時間配分などがあるので、「単に足しただけ」とは言えない面はあると思うが。


僕は、yearの /j/ の音は、意識的にハッキリ発音するようにしている。ネイティブが発音する場合も、文脈による強調の意味があるからかも知れないが、強めに発音されることがあるように思う。

 

ところで、日本語の「イヤー」という表記は、year と ear の混乱に拍車をかける曲者である。

 

なぜ2文字目に「ヤ」が入っているのか。


前述のように「/i/ と別の母音がつながっている」ので、間にYのような音が入る現象がある。カタカナの「イヤー」の「ヤ」は、その音だと思う。つまり、この「ヤ」は、/íɚ/(あるいは /íər/)の途中で感じる「ヤ」であって、year の最初の y とは無関係のはず。この「ヤ」が元で混乱している人もいるんじゃないかと思う。

 

year と ear の違いに取り組もうとしている人が、これらの音のイメージをカタカナの「イヤー」をベースにしているとしたら、まずは、この中の「ヤ」を忘れた方が良いのではないだろうか。

 

まとめ

RとL については躍起になっても、この音については「わからない」と諦めてしまっている人もいるようだが、決して難しい音ではないのになぁ、と思う。

 

この音は、以下の点でわかりにくくなっていると思う。

  • 舌が持ち上がる前後の位置には種類がある。学問的な解説と、実践的に練習してきた人で、言うことが異なる傾向があるようだ。
  • 学問的には、「後ろの母音に続くときの変化具合」がこの音の特徴となる。開始点の音は半母音であって濁らない。
  • 実践的な人においては、強く発音して、濁った摩擦音が少し出ている場合がある。ただ、「それこそが /j/ の音」というのは言い過ぎかも知れない。
  • 摩擦音が判別の手がかりになる場合があるが、まったく摩擦音が出ていない場合も当然ある訳で、その場合は「開始点から母音へ移る際の変化」を聞き取らないといけない。

 

これらを理解した上で、まずは自分で音を出せるようになることが大事だと思う。/j/ から後ろの母音へ移行する際の変化量を大きくするために、摩擦音が出るまで舌を上げる練習をするのは有効だと思うが、その本来の意義を理解しておいた方が良いと思う。


音の出し方がそこそこわかってきたら、音読の時に、この音をもれなく発音する。僕は、それをやっているうちに、だんだん聞こえるようになってきた。やがて、ネイティブでも発音の仕方に差があることもわかってきた。


時々、判別が難しいものに当たるが、僕はそんなに気にしていない。RとL についてもそうだが、聞き分けクイズなどは、「試すぐらい」なら良いものの、そればかりやっていても、あまり練習にはならないと思う。それをやるぐらいだったら、自分で発音し分ける練習をした方が良いと思う。

 

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