「英語の発音と英会話は別物か?」
こう聞かれたら、私は、はっきり「別物です」と答えます。
でも不思議で、
・「発音と英会話は別物か?」と聞かれたら「別物です」と言い切るけど、
・「英会話と発音は別物か?」と聞かれたら「ん?関係あるんじゃない?」
と答えることになりそうです。
これって、数学で習った「必要条件・十分条件」みたいな話で、
・「英会話」をするのには、「発音」の良さがそこそこ必要だけど、
・「発音」ができたからって、「英会話」ができるとは限らない、
ということなんですよね。私の理解では。
「何を訳のわからないことを言っているのか?」と言われてしまいそうですね。
これ、大変わかりにくい話なんですが、大事な話なので、このブログの最初のうちに、一度は書いておくことにしました。
(今後も、いろいろな言い方で説明していきたいと思います。)
〔2022/09/01追記:2022/08/31付の記事「英語発音と英会話の関係に関する私の考え方」で図での説明を試みています。〕
「発音」と「英会話」の関係について、ざっくり言うと、
・「発音」を「英語の能力の根底となる土台」と捉えるか、
・「発音」を「英語の能力の最重要項目である英会話という能力の、さらなる仕上げとなる技術」と捉えるか、
によって、まったく変わってきてしまう、と思うんですよね。
前者(発音は土台)が、私の考え方です。英語の能力において、「発音」は最下層の土台で、「英会話」は頂点。その途中には、膨大な単語や表現を習得しなければならない(口に出して身体で覚えなければならない)という世界、さらには、「聞いたことを自然に理解する能力」、「感じたことを自然に言える能力」を鍛える、という大変難しいことに挑戦的していなければならない、という世界がある。その上で「会話」というものが成り立つ。
つまり、「発音」と「英会話」の2つは完璧に離れているんです。
一方、後者(発音は英会話の仕上げの技術)が、世間での一般的な考え方だと思います。
「一般的な考え方」といっても、「それは具体的にどういうことか」ということになると、人によってかなりのバリエーションがあるような気がします。
私が想像する代表的な考え方は以下です。
- いわゆる「4技能」と言われている英語能力の集合体みたいなものがある。
- その4つの能力は最初から同時進行で取り組むべき。
- バランス良く向上させるのが理想だが、とりわけ「話す」ことが重要。
- その「話す」という能力は、「英会話」という活動で目に見える形となる。
- その「英会話」に磨きをかけるのが「発音」である。
「え? そうだよね? 何か違う?」って、違和感なく捉えられた方も多いのではないでしょうか。
この考え方だと、まず「英会話」ありきで、その「英会話」の能力をさらにハイレベルなものに磨き上げるのが「発音」である、といった位置づけになるのではないでしょうか。言い換えると、「発音」は、「英会話」の表面コーティングみたいなものということになり、両者はくっついているんです。
(この場合、「発音」と「英語そのものの能力」は関係ないと思われている可能性が大ですね。)
私が言わんとしているこの2つの違い、わかっていただけますでしょうか。
私としては、どうしても、この2つの考え方があるように思えてならないんですよね。
この2つの違い、「どちらが正しいか」というより、まったく異なるアプローチなんです。
私の考えでは、明らかに前者が理想。
しかし、大人になってから、このやり方で、最下層の「発音」から頂点の「英会話」(言いたいことを自然に話せるようになること)まで1つ1つ積み上げるには、膨大な年月がかかってしまいます。私だって達成していません。
「だったら、発音を学ぶことなど無駄ではないか?」というと、そうではありません。
発音をやっておけば、聞くことが容易になるし、意外にも読むことも楽になります。英語のレベルが総合的に上がります。
一般に、「英会話ができなければ英語をやる意味がない」という考え方が根強くあるように思いますが、私は「そうとは限らない」と思います。このような考えに縛られて苦しくなってしまっている方がおられたら、少し緩めてあげてみてはいかがでしょうか。
後者の場合だと、先に「目に見える結果」に着目しているので、ややもすると表面的になってしまいがちですよね。「表面だけで中が空洞」ということが起こり得てしまう。
では、表面ではなく中身となる「英語能力そのもの」をどうやって埋めていくか、人によって取り組み方は千差万別。そこで「何をやったらよいのかわからない」ということも起きてきちゃうんじゃないかと思います。空洞の容積は膨大ですから。
ところで、この「英会話がなにより大事」パターンにおいて、「発音」を学ぶということは、どういうことか?
「会話」と「発音」をセットとして捉える訳ですから、「会話で使われる決まり文句の表現を滑らかに言えるようにする」ということが主眼になるのかも知れません。この「決まり文句を滑らかに言う」こと自体を「発音」と呼んでいる方が、少なからずいらっしゃるかも知れませんね。
ここで、少し補足しておくと、「2つに分けられる」と言っても、どちらにも当てはまらない方も多数いらっしゃるはず。そう、「英語はできるが、発音や英会話は苦手」という方。今回は、「発音」と「英会話」の関係についての話なので、このような方は含めずに話をしてきました。
ちなみに、このような「既に英語が堪能だが、会話や発音が苦手(あるいは発音だけ苦手)」という方が、「発音を何とかしたい」といった場合、「発音を1から直す」というのは、かなり大変だと思います。正直、現実的ではないです。おかしいところを見つけては、少しずつ「矯正」していく、といった方法になると思います。
一口に「発音」といっても、その意味するところや適切な習得方法は、述べてきたようなタイプによって、まったく異なるものだ、と思っています。
さて、話がまとまりにくくなってしまったので、この辺で締めますね。とにかく、「発音と英会話の関係については、2つの全く異なる考え方が、成り立ち得る」ということがわかっていただけたら、とても嬉しいです。
説明が難しかったので、今後も別の表現方法での説明を試みます。
発音をずっとやってきた私としては、「発音は英語の基礎・土台」という考えが当たり前になってしまっているのですが、一般的には、「発音ができるのなら、英会話だってできるでしょ?」みたいに捉えられてしまっているようで、どうにも気にかかっています。
おそらく、このような考え方が整理できていないところが、日本人が英語が苦手な原因の本質的なところに影響しているのではないかな?という気がしています。