うるさい素人

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英語発音雑記(6) thの音は、息がどこを流れるのかを理解することから始める

この雑記では、英語発音に関する私自身の回想や考えなどを「独り言」感覚で綴ります。発音方法を解説することは意図していませんのでご了承ください。

 

thの音は、「わかったようなわからないような音」という印象を持っている人が多いのではないだろうか。僕は、その原因として「それぞれの人が発音しきれていないこと」、つまり、「自分自身で、その音の感覚がわかっていないこと」が挙げられるのではないかと思う。さらにその原因として、「音の出し方について、何か誤解されている」のではないかという気がしている。

 

よく、「舌を前歯で噛む」とか、「いや、前歯の裏につけるだけで良い」とか、そういう議論があるようだ。何かと、「舌先がどうなるか」の議論になりがち。

 

他の音でもありがちなことだが、何かと「舌先をどこにつけるか」を道しるべにしてしまっていることに問題があるように思う。英語の発音って、日本語よりも多くのところを動かす。「動かしたこともないようなところを動かす挑戦」を始めないものだから、動かしやすい舌先で解決しようとしてしまうのではないだろうか。舌先も大事だが、他のところがまったく無視されてしまいがちなのだ。

 

舌先ばかりが着目されているせいか、thの音って、「上の前歯と舌先の間で息をせき止めるもの」ように思われている気がする。僕は、それは誤解だと思う。

 

「前歯と舌先の間」は、重要な箇所ではあるが、そこは、「息をせき止めるところ」ではない。むしろ逆で、そこは「息が出るところ」なのだ

 

ほかのどこからも息が抜ける「逃げ道」がなく、前歯と舌先の「狭い狭い隙間」から息が出るものだから、独特の高い音(摩擦音)が出るのだ。

 

したがって、息の逃げ場である舌先部分のことを考えるよりも前に、「舌先部分でしか息の逃げ場がない形」をつくってやる必要がある。

 

その形を作るために、舌のどの部分を使うかが問題。舌先は後の話だ。まずは、もう少し横に広い部分を使う。

 

人によって、適切な意識の置き方が異なるかも知れないけれど、僕は、「口の中で平べったい空間を作る」よう意識している。

 

僕が発音を教えるようになったら使おうと思っている小道具はあるんだけど、それが使えないので、言葉で表現してみる。あくまでイメージ。

 

前提として、口の中の「天井部分」があって、「上の前歯」がアーチ状に並んでいる。その下の部分にフタをすれば良いのだ。「せんべい」を半分に割ったような半円形の物を想像する。「舌」を、横に平べったくして、その「せんべい」のような形にする。
そして、前歯の下からフタをするように当てる。

 

これで、平べったい空間ができるはず。

 

この空間、スタートレックのエンタープライズ号の円盤部分みたいな感じかも。あの円盤の中が空間かどうかは知らないけど。

 

このように作った「平べったい空間」に息を吹き込む。しかし、歯の下端と舌の周囲により、しっかり密閉されていて、息が抜ける場所がない。


そこで、舌先に当たる部分、上の前歯の1番・2番あたり、ここを少し緩めると、「前歯と舌先」の隙間に「息が抜ける突破口」ができる。


この、わずかな隙間から漏れる空気の摩擦音がthの音なのだ。というか、僕はそう思っている。

 

だとすると、「舌を前歯で噛む」とか「前歯の裏につける」といった「舌先が前歯にどのように当たるのか」ということは、本質的な議論ではないといえる。狭いところから空気が漏れる音が出れば良くて、その加減は音で調整すれば良い。強いて舌の形を言うならば、世間で「舌先舌先」と言われているイメージよりは、もう少し、舌全体が横に広がった感じ(舌が幅広く前から見える)というのが僕の印象だ。

 

もっとも、普通に話す時には、必ずしも、このようなベタッとした形になるとは限らないだろう。舌は、一瞬であちこちに動き回らなければならないので、あまり悠々とはしていられないからだ。

 

さて、このthの音、僕はどうやって練習してきたか。


最初、子供の頃は、一般的な解説で、簡単に「できた、できた」と思っていた。英語塾の先生の真似をしただけで、できたような気がする。

 

しかし、その後、綺麗な音を出そうと思うと、けっこう難しいことに気づいた。


50代からのやり直し英語で、変な癖をつけてしまい、取るのにかなりの時間がかかった。その際に、息の流れを意識するようになったのだ。

 

thは摩擦音だから、連続で出せる音である。無声音 /θ/ と有声音 /ð/ があるが、基本的には無声音で「型」を作った方が良いと思う。

 

舌を平べったくして息の流れを作ってやれば、「舌先の部分から息を出す」ということ自体は、さほど難しくないんじゃないかと思う。

 

難しいのは、舌先の緩め方により息を出す加減を調整すること。

 

「摩擦音だから連続で出せる」と言っても、緩めすぎて、/θθθθθ/ と発音しようとすると、/s/ や /f/ に近くなってしまう恐れがある。「連続で出すにはちょっと苦しいぐらい」、「ちょっと勢いをつけて短めでないと出せないぐらい」が、ちょうど良いんじゃないかと思う。

 

ところで、カタカナの「スー」に相当する音だという意識は捨てるようにした方が良い。強いて言えば「ツー」の方が近いかも知れないが、このthについては、「日本語には似た音すらない」と思った方が良いような気がする。

 

有声音 /ð/ は、この /θ/ と同じ構えで、声帯を震わせる音。声帯だけON/OFFできると良いが、それが難しければ、/s/ と /z/ などの切り替えで、感覚をつかんでからの方が良いんじゃないかなという気がする。

 

ちなみに、僕は最近、thの音をすごく丁寧に発音するように心がけている。原理的には簡単な音かも知れないが、綺麗な音を出すには継続的な練習が必要なのだ。丁寧な発音をやっていると、これまで、「なんと雑に発音してきたか」と思い知らされる。「雑」というよりも、「出しているつもりで出ていなかった」ことも少なくなかったのではないかと思う。

 

ちなみに、thを発音する時の、正面から見た「口の形」は1つではないと思う。前後の発音に引きずられるからだ。僕は、練習の際、意識的に、「少しすぼめた形」でも「横に広げた形」でもできるよう、確認することがある。


もう1つ補足。thの音の出しやすさは、歯のコンディションで変わってくると思う。
子供の頃と比べると、今の方が出しにくい気がする。おそらく、上の前歯4本とも「差し歯」にしたからだと思う。今の差し歯、本来の歯の「自然なザラザラ感」がなく、ちょっとペタペタと貼り付く感があるからだ。とはいえ、練習すればできるようになることなので、歯並び、入れ歯、差し歯などは、重大な障害にはならないと思う。

 

さて、発音については、語り出せばキリがない。今日の主旨とは外れていってしまう。

 

まとめると、「舌先を前歯につければthになるというものではない」、「息がどこを通っているのかを理解して、その形を作ることが大事」、といったところだろうか。

 

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